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乙嫁語り(1〜3巻)
 JUGEMテーマ:漫画/アニメ
何かと話題のこの作品。気になって1巻購入。読んだらハマって即3巻まで購入。読んだ後の読後感がとてもいい作品です。

「乙嫁」とは「綺麗な若いお嫁さん」という意味の古語。つまりこのお話、色んな若いお嫁さんを描いた物語。舞台は少し前の中央ユーラシア大陸。遊牧民と定住民の日常生活をドキュメンタリーの様に淡々と描く作品。

最初は20才の美貌の若いお嫁さんアミルと12才の利発そうな少年カルルクとの8才年の差の婚礼シーンから始まる。1,2巻ではこのカップルが中心ですが、3巻では視点が代わり、このカップル宅に居候していた英国人の研究者スミスと、5人の兄弟夫(最初長男に嫁ぎ、長男が亡くなると次男に嫁ぎ…という地元の風習に伴って5男までにも嫁ぎ)に死に別れた美貌の未亡人タラスとの恋の物語。

この作品、主人公が固定ではなく、登場人物に関わる「乙嫁」達の結婚生活にまつわる日常を描いた作品で、視点がどんどんシフトしていきます。タイトルに「語り」と付けただけあって、最初からこの構想は著者の中にあったんだと思います。

漫画という媒体が、エンターテイメントだとする昨今の作品とは一線を駕す作品。例えて言うと、他の漫画がハリウッド映画なら、この作品はNHKのドキュメンタリー番組の様な質の作品。しかも高画質

著者の前作、19世紀末の英国のメイド生活を淡々と描いた「エマ」と空気感は似ているかな?! 著者の英国&中央アジア好き〜が嫌みなく綴られ、画力もさることながらこの「好き」という著者の意気込みと温かい人柄が、直球で心にズシンと伝わってきて、読んだ後、心がほっこりとなる作風です。

構成的には、とても躍動感とスピード感に溢れ、人間模様も織り交ぜながら「生きる」ことの厳しさ、「幸福とは?」という人間の根底にある基準を、文字ではなく絵で丹念に描いています。(欲を言うなら、最初のお嫁さんのアミルの結婚が、何故アミル一人が馬に乗ってやって来なければならなかったのか、という下りを描いて欲しいですね。そうじゃないと、後のアミルを強奪する元家族の心情が判りづらい)

ここからは画力のお話…(又も語りが熱いし長いですっ!ウザい方はスルーを

中でも特筆すべきはその画力&デッサン力!凄い!現代の漫画界の中でも5本の指に入るんじゃ〜ないかというくらいの画力の凄さ、確かさです。しかも、殆どアシスタントなしで、背景から人物に至るまで全部著者一人で描かれています!(アシさんは二人、しかもトーン処理のみ)

雑誌掲載は隔月、しかも全部殆ど自分1人で描いてるので、年1回の単行本刊行ペース。読めば判りますが、とにかく人物、背景、小物に至るまで、物凄い描き込みの量!好きじゃないと出来ないよ〜コレ

人気作家はメイン人物しか描かない昨今の漫画業界に置いて、この描き込みと刊行ペース(単行本一冊約190P。月換算すると15~20P)は、出版社と著者との連携でないと成り立たない。(ワンピースの尾田さんでさえ、動く物(人物&動物等の登場人物&モブ)だけは全部自分でペン入れしているらしいから、それの上をいきますね〜)しかも舞台は中央アジアですから馬が!馬が!上手い!わんさかと出てきて、本当に画力の高さには唸っちゃいます!もうね…画面の隅々まで見入るほど、背景、人物、馬、衣装の手描きの模様の一つ取っても手抜き感全くなし!(登場人物の衣装が民族衣装なので全部手描きなんです!スゴい〜!

そして…漫画描く側としては熱くなっちゃうけど、コマが…コマが…多いんです!今の漫画はBL界では1Pに5コマ、青年誌でも7コマ辺りが出版社側の要望だそうですが、この漫画、大体は7~10コマと、とにかくコマ数が多いんです!しかも重要なコマでも、すご〜く小さいコマだったりして、昔の重厚な漫画を彷彿とさせるんですよね〜!(でもちゃんと見開きの大ゴマもあるし、無駄ゴマがない!)

それにこの方、とにかく絵で魅せる数少ない漫画家さん。勿論会話も一杯あるんだけど、恐らく著者の伝えたいことは、セリフではなく(セリフが全くない)絵だけの連続コマで魅せます。これがなんとも言えない独特の雰囲気ある作品に仕上げています。

私が以前紹介した「内田善美」という何十年も前に消えた漫画家さんの描き込みと画力が、今まで読んだ漫画の中では最高レベルですが、森さんは違った意味で凄いな〜と思います。森さんは「エマ」がデビュー作らしいんですが、エマの最初と見比べると画力の向上が物凄い作家さん。エマの時よりもキラキラ感と躍動感が目覚ましい〜

漫画って描いたら判るけど、とにかく作業量が多いお仕事!そこに量産を要求する出版社側がいて、力尽きてしまう作家さんも多い業種ですが、この方は「いい作品を残す」という自分のペースと画力をよく理解して伸びている作家さんではないかと思います。たくさん描かなくてもいいから、この方の様に質の良い作品を世に残す作家さんが増えて来ると、読む側は嬉しくなっちゃいますね〜

仕事から帰ってきて、寝る前に心をほっこりとさせたい方にお薦め!勿論★5つ!
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